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メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書) (新書)

メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)

メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)

あるある大辞典納豆ダイエット問題のような、メディアが発信する誤った健康情報を主に取り上げた本。
ニセ科学、という文句もついてはいるけれど、基本的には健康に関する話題が多い。

納豆ダイエットとかは騙される奴らがアホだ、俺はメディアには踊らされないぞ。
……なんて事を考えている人は結構いるのではないか。
しかし、メディアが誤った情報を発信するケースはもっと色々なものがあり、
それをそのまま記憶したり、常識として認識してしまうケースは誰にでもあると改めて考えさせられた。
この本で取り上げられている内容で俺が誤解したままだったものの例としては
などが上げられる。
まず環境ホルモンについては、散々騒いで問題として取り上げたものの、実はそこまで影響が無いといった内容。
環境庁が予算を得たり、存在感を高めるべく積極的に取り上げてメディアに情報を提供したという面もあるらしく、
必ずしもメディアだけの問題ではないといえそうだ。
ただし、この本で再三触れられているが、「後になって問題が無い事がわかった」場合、メディアはほとんどそのことについて取り上げてくれないという点は重要だろう。
俺はテレビを最近見ない人なのでちょっと判断が怪しいのだが、環境ホルモンがそれほど騒ぐものではない、というニュースや番組をみた覚えは無いような。
取り上げた後はほったらかし、そういうメディアの特徴は非難されてしかるべきだろう。

食品添加物についても、同じように実際に使われている物は問題が少ない事が指摘されている。
食品の裏側―みんな大好きな食品添加物

食品の裏側―みんな大好きな食品添加物

などで否定されている「添加物」は実際には天然の果物に含まれるものであったりとか、
本当に食品添加物とされているもので、発がん性が疑われている、と紹介されているものが、
現在では発がん性が否定されている……といった点が指摘されている。
また、「無毒性量」の説明もいい加減なもので誤解があると指摘している。
「ネズミに100グラム使ったら死んだ、じゃあ人間にはその100分の1の1グラムにしよう」そんな風に食品の裏側、では書いているそうだが、
実際には無毒性量とは、実験に使う動物が一生涯食べ続けてもまったく影響がでない量を示すそうで、
さらに、この動物で調べた数値を100分の1したものを人間の一日摂取許容量とさだめているそうだ。
つまり、実際に使われるような食品添加物はかなり厳しい基準が設けられていて、安全といえるとの事。
もちろん100%何があっても安全という事はできないだろうが、100%何があってもなどと言えばありとあらゆる食品、
特に添加物が無いものでも駄目になってしまうだろうなあ。

食品添加物に対する拒否反応が煽られた結果、優秀な添加物でも名前が添加物を連想させるものだと使われなかったり、
また、保存料という名前がついていると印象が悪いとして、優秀な添加物なのに使用されず、別の添加物が使われてしまうというケースもあるそうだ。
優秀な保存料が使われなければ結果として廃棄物も増えてしまうという実害も話されている。
天然色素は高い上に着色効果が低い、結果として量も多めになる、しかも天然だからこそ含まれる不純物もあるという指摘も。
添加物バッシングの結果、消費者にむしろデメリットがあるという点は見逃せない。
企業にとってもデメリットはあるだろうが、逆に天然色素を扱う企業は恩恵を受けているかもしれない……。

有機農業や農薬についても、同じような内容が述べられている。
現在の安全な農薬を使った方が効率だけではなく、安全性や質も上げられるそうで。
冷静に考えれば確かに有機農業には農薬とは別の面でリスク(作物の病気とか虫害など)があるわけで、
しっかり研究して適切な農薬を使用した農業と比較して、安全性や質が上と言える根拠は無さそうだ。

遺伝子組み換え大豆の問題もあって、これも正しい知識は俺は持っていなかったのだが、なんとなく、
「別にいいんじゃね?」ぐらいのもので、まさか日本以外では相手にされて無いような問題だとは知らなかった。
遺伝子組み換え大豆の危険性を訴える研究はかなりずさんなもので、専門家の間でははっきり否定されているとの事。
まあそのことはあまり日本で報道されて無いみたいだけど。

全体を通して言える事は、メディアは受け取り手に強い印象を与える情報を発信しがちであるということか。
○○は危険!という情報の方が、○○は安全!という情報よりも受けがいい。
また、危険!という警鐘を鳴らして後で間違いだった、ならいいけれど、
安全!と主張して後で間違いだったらバッシングが怖い。
そんな情報発信側の心理もあるようだ。

科学が関わる問題については専門家でも意見が分かれることがあるなど、一筋縄ではいかないのは確かだろう。
ただし、この本で上げられている例は、メディアが少し努力して勉強や取材をすれば間違いを報道するような事は無いであろう物が多い。

本の感想とは別になるが、自分の師匠は新聞なら朝日が一番マシと言っている。
理由は「朝日が一番金を持っているから」との事。
つまり、取材にちゃんとお金をかけている、かけられる点を評価しているわけだ。
確かにいい加減な取材を行う新聞やメディアの話は聞いたことがあり、予算がそれに影響していると考えるのはありかもしれない。
NHKもお金があるので取材にはかなりの人数が動員されるなどで、テレビではこちらがやはり信用度が高いと言えそうだ。

話を戻すと、メディアは不勉強なまま、受けのいい情報を発信する事が多い。
その中には科学のフリをしたエセ科学も含まれている事もあるという事だ。
そうしたエセ科学を見破るためにも、広く情報を集める意識が必要になるのだろう。
他にも国の政策で科学的に考えて無茶だったり非効率な物が宣言されたり実施されたりするケースも紹介されているなど内容はあるのだが、
流石に文量が多くなってきたので、俺の方では触れるのは以上で終わりとしておこうかと。
気になる人は買う、立ち読みする、身内なら俺に借りるなどされたし。
俺の勝手な勘違いの部分もあるかもしれないし、実際に読んでみるのが一番だろうしね!

さて、散々書いたものの、本もメディアである。この本に書かれている内容も全てが正しいとは言い切れない。
とはいえ、書かれている内容は納得のいくものが多く、読んでよかったと思える一冊でしたとさ。
糸冬