インザナ地獄

インザナ勢です

脳研究の最前線

脳研究の最前線(上巻) (ブルーバックス)
脳研究の最前線(下巻) (ブルーバックス)
感想書こうとか思いつつ放置してた。

読むきっかけとしては俺の心理学関係の知識は臨床心理、カウンセリングに偏っていると思って、
精神医学とか脳関係の本も読んだ方がいいなと思って探して、たまたま目に付いたため。
しかし、タイトルに最前線と名づけられているだけあって、内容は専門的かつ難解。
俺のようなちゃんとした科学を勉強していない人間にはちょっと厳しい本だった。

内容は脳に関する研究を続けている学者達が、おのおのの専門とする分野に関して現在およびこれまでの研究を解説するというのがメイン。
脳科学というのはこういうものですよーとわかりやすく説明するタイプではないので、そこは注意が必要。

第1章は脳の認識などについて基本的な事を説明してくれている、この本の中では一番読みやすい章か。
錯視の話や視野に入った情報への意識配分の話などがあり、本人の最新の研究などについては確か触れていない。
まあこの本を読むための導入というか前書き的な存在の章だと思うのだが、他の章とは大分読みやすさが違うので、
俺のようにこの章だけをさらっと読んで、これなら読めそうだ、とか判断するのは危険w

第2章以降は正直説明できる能力が俺にないので特に章ごとにコメントすることはしない。
心、言葉、認知、情報伝達、アルツハイマー病、精神疾患など様々な脳に関わる研究が進んでいるが、
読んでいて、自分が思っていた以上に未知数な部分が多いということ。
ちゃんとした学者が中途半端な段階の研究をさも事実のように語る事はないのだろうけれど、
脳についてこれはこうなっている、とはっきりとわかる部分というのは非常に限られていると認識させられた。

個人的に面白かったのは第8章で、ラットの脳に電気刺激を与えるデバイスを取り付けて、ラットの行動を制御する、
失明した人の視覚を刺激電極を利用して取り戻そうという試み、サルの脳の情報を分析して、サルの手の動きをその情報から予測、
ロボットアームに再現させるといった内容が書かれており、研究が進めばかなりの可能性が見出せそうな分野だと思った。
逆を言えばかなり怖い使い方もできそうなんだが……。

また、気になっていた心の病気に関する第9章だが……。

そして、きっとその頃には、精神疾患も肝臓や心臓の病気と同じような身体の変調であることを疑う人はいなくなっていることだろう。
と、最後に書かれている。
俺個人の考えとしては、精神疾患に関して具体的な症状が起きる理由に関しては身体の変調(脳の神経細胞ドーパミンなどの物質量の変化)
については異論がない。
しかし、なぜそういう身体の変調が起きるのか、そこを解決しないことにはしょうがない疾患もあるだろうと考える。
俺はてんかんの薬を飲むことで9月以来症状は一切起きないようになったが、この薬はずっと飲み続ける必要があるとの事。
幸い副作用に関してはほとんど実感できる薬ではなかったからいいものの、副作用が強い薬だったらどうだったろう。
薬などで身体の変調が抑えられるからといって、それを病気などの克服とみなせるかは微妙なところだ。
もちろん身体の変調という部分の解決も大事なのだが、変調の原因の究明とその原因の克服も大事なものだろう。
なので精神疾患を身体”だけ”の変調と捉える姿勢には疑問がある。
しかし、脳科学の進歩で身体の変調の理由を診断する事が容易になれば、それを引き起こす心理的要因を判断する事も楽になるだろう。
結局のところ脳科学あるいは医学的アプローチとカウンセリングなどの精神的なアプローチは両方併用していくべきかと。

そんなわけでこの本を読んでも俺の考えにまるで変化がなかったと言えてなんとも。
一応、医学的な部分でのアプローチも大事という印象は少し強くなったかもだが。
しかし、精神疾患の治療に関して一番の問題といえば、医学的アプローチにせよ精神的アプローチのどちらにせよ、
それを適切に行える医師やカウンセラーにめぐり合えるかどうかじゃないだろうか。
なんだかんだで精神疾患の対処に関しては歴史が浅いと思うし……。
少なくとも「ウツは薬で治る」なんて軽く言ってはいけないと思う。

まとめ。
本の内容の詳細に関しては理解が追いつかない部分が多く、ちょっと俺には評価できない。
ただ複数の研究者が各章を担当しているため、専門的な内容が確認できるというメリットがある一方で、
一つのまとまった流れで文章を読んで、脳の仕組みを理解するという事には役立て辛いというデメリットがあるといえると思う。

まともな感想かけてないが、糸冬