インザナ地獄

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工学部・水柿助教授の解脱 読了

工学部・水柿助教授の解脱

工学部・水柿助教授の解脱

M&S(水柿君アンド須磨子さん)シリーズ3作目にして最終作?なんだよなあ。
読み終えてしまったのが惜しい気もするけれど、まあ段々内容が本人のブログと近い内容になりつつあるというか、
単純に現在の森博嗣の近況に近づいてるわけなので別にかまわないかも知れない。
でもやはり、あちこちに見られるちょっとした皮肉やユーモアなど、本人曰く書くのが難しい部分、の面白さがもう見れない?かと思うと惜しいなあ。
などといきなり最終作である事への感傷みたいなところから始まってしまった。
本人のホームページをちゃんとチェックしていないので、案外似たようなタイプの作品を他にも書いてるかもしれないなあ、いずれチェックするとしよう。

内容を簡単に説明すると、工学部助教授であった水柿君の日常を書いたものが1作目である、工学部・水柿助教授の日常 (幻冬舎文庫)で、
その水柿君がひょんな事から小説を書いて色々な変化が起きる辺りを書いたものが2作目である、工学部・水柿助教授の逡巡 (GENTOSHA NOVELS)
3作目である今回は、小説を書いて得たお金で水柿君の生活はどう変わったか?特に犬のパスカルを飼い始めた事などが話題の中心となっている。
ちなみに、これはあくまで小説である、と触れられてはいるものの、どう見ても内容の大部分は森博嗣本人の体験した実話であると思われる。
3作目の今回にいたっては水柿君が飼っている犬の名前と森博嗣が飼っている犬の名前が一致している始末である(他の人物などは全て仮名の模様)。

これだけみると特に面白みは無さそうだが、実際に読んでみると独特のギャグというかユーモアというか皮肉というか、
全体的に笑える要素が盛りだくさんである。一例を挙げると。
さて、水柿君と須磨子さんが住んでいるところのすぐ近所で、万博が開催された。万博というのは、ヨロズ・ヒロシさんのことではない。万力博士でもないし、万年博覧強記でもない。万国博覧会だ。
あれ?引用する部分を間違ったか……?
ともあれ普通に日常を書くと見せかけて、どんどん話が脱線したり、そもそも話の本戦がどこだったかわからなくなるような展開があったりとか、
引用したような駄洒落というかボケや韻を踏んだネタなどが目白押しで、そこが妙にセンスがあって面白い。
センスがあって面白い、としか評価できない俺のセンスはなくてつまらない、とか思わず考えてしまって切ないえむきょんであった(まだ水柿シリーズの真似に懲りてないのか)。
今回はお金が入った事による生活の変化の話題が多いが、そこで書かれている水柿君の心境を見ていると、なかなか考えさせられる。
俺はどうしても人を気にして生きていく事しかできないので真似はできないが、発想は活かす事ができるんじゃないだろうか。

好きなシリーズの最終作なのにあまり人に読みたいと思わせるような事が書けないぞ。
俺の能力と努力(読み返すなどの努力をそれほどしていない)の問題だなあ。
とはいえ、自分が面白いと思ったからといって他人が面白いと感じるとは限らないし、過剰に薦めるものでもないか。
個人的にオススメ、という事だけしっかり主張して感想を終了としますか。